地理的表示「山梨」生産基準

1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項

⑴ 酒類の特性について

 山梨の清酒は総じて柔らかで、透明感のある清らかな味わいを有する酒である。

 酒が口元に近づくと、果実を連想させる香りが優しく立ち上がり、口に含むとその香りが口中に広がる。あわせて徐々に穀物を想起させるうま味やコクがほどよく舌全体に広がり、柔らかで、透明感のある清らかな味わいをもたらす。

 このような柔らかで清らかな味わいの酒には塩気を感じさせる料理がマッチし、酒と食が綺麗に交わり、より味わい深く楽しめることができる。

 

2 酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて

 イ 自然的要因

 山梨県は、富士山、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父など2,000m から3,000m級の山々に囲まれ、県土の約78%を森林が占めている。この山々に囲まれる甲府盆地においても平均標高が300m 程度と比較的高く、周囲の山々も含めると高低差も大きい。

 高い山が海からの湿った風を遮り、一年を通して雨や雪が少ないため日照時間が長く、夏は最高気温が30℃を超えることがありとても暑い日がある一方、冬は最低気温が氷点下になる日もある、いわゆる「底冷え」のする気候である。

 また、富士山を始めとする高い山々に降る雨や雪は、森林を潤しながら長い年月をかけて、山麓の下層にある花崗岩、玄武岩、安山岩等の地層によって自然にろ過されることによりミネラル成分を適度に含んだ伏流水となり、複数の水系を形成する。それぞれが豊かで良質な水を生み出し水系によって微妙に成分が異なるものの、総じて軽やかさを持つ軟水である。

 この軟水を仕込み水として使用し、あわせて醸造期である冬の底冷えもあって発酵が穏やかに進むことにより、雑味が少なくほどよい香りとうま味を有す、柔らかで透明感のある清らかな味わいの酒がこの地に成り立った。

 

 ロ 人的要因

 海に面しない山梨県は、塩や海産物などの産物を隣接する静岡県や神奈川県等に頼っており、保存の効く塩物や干物に加工した上で山梨県まで輸送していたものも多くあった。また、戦国時代にこの地を支配した武田信玄は味噌の製造を奨励していたといわれており、麦麹と米麹による合わせ味噌であることを特徴とする甲州味噌は、代表的な郷土料理「ほうとう」以外にも多くの料理に使用されている。これらのことから、山梨県民の間で塩気を感じさせる料理を好む味覚が形成されてきたと考えられる。

 また、山梨県は江戸幕府直轄の地として、軍事上、あるいは物流上重要であった五街道の一つ「甲州街道」を有し発展してきた。加えて、江戸時代には富士山への信仰登山や日蓮宗の総本山久遠寺がある身延山への参拝が流行した。夏は暑く冬は寒く、また甲州街道に至っては笹子峠の前後におよそ800m の高低差もあり、このような厳しい気候のもと高低差が続く街道を旅した人々には、塩気を感じさせる料理が大変美味しく感じられたものと考えられる。

 こうした料理とともに飲用されてきたのが山梨の酒であった。少なくとも1796 年(寛政8年)には、県内に村造り酒屋、町造り酒屋及び宿場造り酒屋との3形態の造り酒屋があったとの記録もある。このような歴史的な背景から、塩気を感じさせる料理にマッチし綺麗に交わる、柔らかで清らかな味わいを持つ酒造りが発達したものと考えられる。

2 酒類の原料及び製法に関する事項

⑴ 原料

 イ 米及び米こうじに国内産米(農産物検査法(昭和26 年法律第144 号)により 3等以上に格付けされたもの又はこれに相当するものに限る。)のみを用いたものであること。

 ロ 水に山梨県内で採取した水であって、南アルプス山麓、八ヶ岳山麓、秩父山麓、富士北麓、富士・御坂及び御坂北麓のいずれかの水系の水のみを用いたものであること。

 ハ 酒税法(昭和28 年法律第6号)第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用 いたものであること。ただし、酒税法施行令(昭和37 年政令第97 号)第2条に規定する清酒の原料のうち、アルコール(原料中、アルコールの重量が米(こうじ米を含む。)の重量の100 分の10 を超えない量で用いる場合に限る。)以外は用いることができないものとする。

 

⑵ 製法

 イ 酒税法第3条第7号に規定する清酒の製造方法により、山梨県内において製造されたものであること。

 ロ 酒造工程上、貯蔵する場合は山梨県内で行うこと。

 ハ 消費者に引き渡すことを予定した容器に山梨県内で詰めること。

 

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項

⑴ 地理的表示「山梨」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法第28 条第6項又は第28 条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28 条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。

 

管理機関の名称:山梨県酒造協同組合
住所:山梨県甲府市国母4-15-5
電話番号:055-224-4368
ウェブサイトアドレス:www.yamanashi-sake.jp

⑵ 「酒類の原料及び製法に関する事項」の⑴ロに定める水については、管理機関が業務実施要領により、採取する際の条件等について明確に定義した上で、⑴による確認を行うこと。

⑶ ⑴による確認を受けた酒類であって、酒類の容器又は包装に地理的表示であることを明らかにする表示と併せて、原料として米及び米こうじに山梨県内で生産した米のみを用い、水に山梨県内の特定の水系で採取された水のみを用い、かつアルコールを用いていない旨を表す別図の表示を行う場合は、業務実施要領に基づき表示することとする。

(別図)

 

4 酒類の品目に関する事項

清酒

 

山梨の水系